家族や人生の選択について考える一冊。『パリの砂漠、東京の蜃気楼』📖by 金原ひとみ
金原ひとみ 『パリの砂漠、東京の蜃気楼』
金原ひとみの著作はなるべく読むようにしている。理由はいくつかあるが、同じ歳ということも大きく関係している。もちろん彼女の文章に中毒性があるということもある。
2011年に娘2人を連れ、渡仏。パリに6年間住むが、日本に帰国する決意をする。本書は、パリ時代、そして東京へ戻ってからの日々を綴った初の内省的エッセイ。
エッセイのはずだが、小説のようでもあった。彼女の著作を読む時はいつものことだが、一気呵成に読み終えてしまった。文章のドライブ感に舌を巻く。口にピアスを通すシーンでは思わず目を瞑った。金原ひとみの文章は読むと実際に痛い。前半はフランス語の言葉を中心にエッセイが紡がれる。aiguille(針)、canicule(熱波)、mystification(欺瞞)。 異国に住むとはどういうことか、家族とは何か、人生の選択について、痛みを伴いながら読了した。
「自分も含め、アラームを聞いて身の危険を感じた人々、一瞬にして逃走経路を考えた人々、そういう人々が生きるこの場所に私はどこかで絶望し、同時に清々しさを感じた。それは多分、今ここで死んでしまうかもしれない自分を受け入れることでしか享受できない清々しさだった」
「東京に戻って得たものは圧倒的な便利さと自分であらゆるものをコントロールできる語学的手軽さで、パリを離れたことで喪失したのはこの緩さによる生きやすさと自分が人からどう思われるかを考えなくて済む気楽さだと改めて実感する。最初の一年鬱になり、最後の二年はあらゆることに煩悶しながら過ごしていたフランスだったけれど、あの時確かに私は日本にいると感じられない、ある種の生に対する気楽さを享受していた」
パリには1年住んだことがある。辛い経験ももちろんあったが、ある種の生に対する気楽さを享受していた。同感である。
Hitomi Kanehara Essay “Desert in Paris, Mirage in Tokyo”
I’ve tried to read all the works of Hitomi Kanehara. It’s partly because she happens to be the same age as me and her sentences are addictive.
In 2011, she left Japan and started living in Paris with her two daughters. After living there for six years, she decided to come back to Japan. This book is an essay reflecting on Paris days and the life in Tokyo after she returned. Although this is supposed to be an essay, it reads like a novel. Her style drove me to read through the end at a stretch. The first half of the essay unfolds around each French word such as “canicule”, “aiguille”, and “mystification”. This essay made me think about what it is like to live in a foreign country, what constitutes a family, and decisions in life. Her sentences are pungent and they literally pierced me in some descriptions.
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