『友田と松永の話』 谷崎潤一郎
1926年に書かれた小説。1923年の関東大震災後、谷崎は京都に移り住むことになるので、京都時代の初期の作品である。とにかく面白い、の一言に尽きる。日本語はもちろん、英語(翻訳も見事です)でも、止まることがなく、物語に惹き込まれる。 語り手の作家Kはある日しげ女という大和国に住む人物から手紙を受け取る。その手紙の内容は夫が数年おきに姿をくらます故、その夫の居場所を突き止めて欲しいとのこと。そこからKの夫探しが始まる。
肉食と菜食、享楽と節制、華やかさと地味さ、恰幅の良さとやせぎすの体、都会と田舎、西洋と日本の大きな比較の傘の下、様々なものが対比される。生涯谷崎が訪れたことのなかった西洋はどう描かれるのか。谷崎が理想とした女性像とは。日本と西洋という両極の間で揺れている主人公が行き着く第三極とは。 小説を読むときには、プロットよりも文体に惹かれがちですが、この小説は両方とも群を抜いて素晴らしかったです。いつも谷崎作品を体系的に読みたいと思っていながら、1年が終わってしまいます。。来年こそは、読みます!(まずは春琴抄)
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