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Ikuya Takahashi

『Brutus 村上春樹』

村上春樹お薦めの51冊の中から日本文学を3冊取り上げたい。興味深いことに、3作品に共通しているのは、全て村上春樹が文体に魅力を感じていることだ。 1. 丸谷才一『樹影譚』

「丸谷才一さんは紛れもない文章のスタイリストだった。『名文家』というのでもないし、『美文家』というものでもない、また『才筆』という表現ももうひとつそぐわない。『文豪』という地点からはかなり遠く離れている。結局のところ『スタイリスト』としかいいようがないだろう。」

村上春樹が『風の歌を聴け』でデビューした時、アメリカ文学の模倣だという声が多い中、丸谷才一はこの新人の登場を一つの事件と呼び、絶賛した。村上春樹と丸谷才一、考えてみれば、2人には共通点が少なからずある。小説家であると同時に翻訳家であり、世界文学の紹介者であるということ。ジョイスの丸谷才一訳、『快楽としての読書 海外篇』、そして『笹まくら』、どれも素晴らしい。米原万里の薦めで読んだ『笹まくら』、今度はこの村上春樹のお気に入り、『樹影譚』を読んでみようと思う。 2. 『安岡章太郎集1』

「戦後の日本の小説家の中でいちばん文章がうまい人というと、やはり安岡章太郎だろう。最初に彼の『ガラスの靴』を読んだとき、そのうまさに驚愕した。そしてそれが彼にとっての処女作であると知って、更に驚愕した。[…]なにしろ文章の姿勢がまっすぐだ。」

村上春樹はしばしば日本文学はあまり読まないと言っているが、いわゆる「第三の新人」と呼ばれている作家の作品についての言及は多い。プリンストン大学で客員研究員として日本文学を教えている時にもその作品群を授業で扱った。 3. 『アメリカン・スクール』小島信夫

「この当時の小島信夫は、『困った環境』に追い込まれた普通の人の姿を描かせると、本当にうまかった。これは『第三の新人』作家全般について言えることだが、戦争から解放され、何にもない焼け野原みたいな戦後にぽいと放り出され、弱りはてながらも『でもまあ、これでよかったのかも』とほっとしている気持ち(解放感)が、彼らそれぞれの文体を新鮮で共感できるものにしている。」

小島信夫は僕も大好きだ。小島信夫が英語の教員であったということもあって、共感するところが多い。『アメリカン・スクール』に登場する日本人の男性英語教師の描写はリアルで、笑うに笑えない悲哀が漂っている。個人的には『小銃』というデビュー作がとても印象に残っている。 Brutus、なかなか興味深い特集でお薦めします!

 

“Brutus” featuring Haruki Murakami I will introduce 3 works of Murakami’s favorite Japanese literature. What I found interesting is that he is drawn to the style of Japanese. It is said that Murakami first deconstructed the traditional style and made his voice from scratch. That is probably reflected in this selection. His favorites tend to be the ones written by so called “The Third Generation of Postwar Writers”. 1. Saiichi Maruya “Tree Shadows” Maruya is a writer, scholar, and translator (he translated “Ulysses”). Murakami describes him as undoubtedly a “stylist”. Maruya extolled “Hear the Wind Sing” when he debuted. 2. Shotaro Yasuoka “Complete Oeuvre” Murakami says that Yasuoka writes Japanese the best among the post-war writers. He was shocked by its craft of “The Glass Slipper” and flabbergasted when he knew it was his debut work. 3. Nobuo Kojima “American School” “Kojima is second to none when he depicts characters who are put in troubling situations.” I personally admire Kojima’s works as well. His debut work “The Rifle” is my favorite. If you’re a Murakami fan, why don’t you read one of them?

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